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不妊・不育ホットラインで、実際に電話相談に応じている女性カウンセラーによるエッセイを、不定期で配信していきます。

第6回 不妊・不育に絡めとられないで あなた自身を大切に(最終回)

不妊・不育に直面すると、治療方法や病院の選択に迷うだけではなく、仕事を続けることや夫婦関係の悩みなど、様々な辛さを抱えることがあると、これまでのエッセイでもお伝えしてきました。

実際の相談では、電話が繋がった途端から涙が止まらない方、様々な事柄が絡み合って何から話して良いかわからなくなってしまう方もいらっしゃいます。
「結婚すれば自然に子供が産まれると思っていた」「月経も順調で健康なのにどうして子供が出来ないの?」「勉強も仕事も努力すれば報われたけど、子供だけはどんなに努力しても手に入らない」「あの時こうしていればと自分を責めてしまう」「後から結婚した人が次々妊娠して自分を追い越していく」など、やり場のない声が寄せられます。
また、「病院で治療すれば必ず子供は出来ると思っていた」という声も多く、不妊治療のイメージと現実との間に大きなギャップをお持ちの方もいらっしゃいます。

不妊・不育について、まだ原因がすべて明らかになっていないことや、治療法が確立されていないことも多いです。体外受精の成功率(出産に至るもの)は、32歳ぐらいまではほぼ一定で、約20%と言われており、(日本生殖医学会 生殖補助医療の治療成績2017年より)年齢を重ねると成功率も下がります。残念ながら全員が出産に結びついてはいないのです。
医学・医療がまだまだ不確実なことが当事者に伝わっていないことや、当事者は治療を適切に行えば必ず一定の効果が出るはずだと期待することから、「何もかもを犠牲にしてやれることはすべてやっているのに、どうして治療がうまくいかないのか」「流産の原因がわからないことに納得できない」など、当事者が混乱している現状も見えてきます。

「将来後悔しないように治療はやれるだけやる」という方も多いのですが、「やれるだけやる=限界までやらなければならない」のではなく、回数や年齢、金額や体調・気持ちの変調など、それぞれのカップルで考えて決めてもよいことをお伝えしています。
きっといつかは子供を産めると信じていても、「もしこのまま産めなかったら」という考えも頭をかすめます。自分には希望があるのか、それとも諦めた方が良いのか、誰にも答えがわからない、宙ぶらりんで先の見えない「出口の無いトンネルの中に居るよう」な状態であるとも言えます。同じような感情を抱く経験をした相談員が自身を振り返っても、その時期は信じられないほどネガティブな感情がドンドン積み重なり、それに自分自身がやられて疲れ果ててしまい、普通の生活が送れなくなるほどでした。

しかしそのような状態は一生続くわけではなく、子供を産んでも産まなくても元の自分に戻ります。妊娠・出産は必ずしも結果が出せるものではなく、例え年齢が若くても全員が子供を産めるわけではないことを考えると、抗えない現実であるとも言えます。
子供が居ない人生なんて考えたことも無く、真っ暗闇のように思われる方もいらっしゃるでしょう。そこで、今まで見ないようにしていた方向に少し目を向けてみたり、少し先を歩く先輩を探してみませんか?
「仕事を頑張ります」「養子を育てたい」「趣味が生きがいになった」「新しい学びにチャレンジする」など、私たち相談員のところには、そのような声も寄せられています。

不妊・不育はあなたの中にある一部であって、すべてではありません。あなたがやりたいこと、好きなもの、心地良いと思うことを楽しんでください。あなたの中の不妊・不育以外の部分も大切にしてください。あなたはあなたのままで良いのです。私たち相談員はこれからもピア(仲間)として、共に歩みたいと思っています。

(東京都不妊・不育ホットライン相談員)

不妊・不育ホットラインカウンセラーの相談エッセイ