不妊・不育ホットラインで、実際に電話相談に応じている女性カウンセラーによるエッセイを、不定期で配信していきます。
第5回 声を上げにくい「2人目不妊」
すでに子どもがいるのに2人目ができない、いわゆる「2人目不妊」に悩む方も多いのです。打ち明けにくい「2人目不妊」の悩みについてお伝えしようと思います。
1人目は自然妊娠で出産したのに、2人目をなかなか妊娠しないという状態は予想外の経験です。1人産んでいるだけに、「自分は不妊ではないと思っていたのになぜ」と不安になりがちです。
また、近年では不妊治療を経て1人目を出産し、2人目を望んで治療を再開したものの、今度はなかなか妊娠できないという方も増えてきています。
なぜ妊娠できないのか、原因が特定できるとは限りませんが、1人目を出産したあとで、子宮筋腫ができた・感染症にかかった・年齢が高くなったなどの理由で妊娠がしにくくなった場合もあれば、もともと不妊の要因があった人が、1人目は偶然に自然妊娠したという場合もあります。
2人目ができない、という立場は複雑です。不妊の方が集まるグループでは「すでに1人いるんだから贅沢な悩み」という雰囲気を感じ、ママ友のグループでは「子どもが1人だけだと暇でしょう?」などと言われる・・・居場所がない、誰とも気持ちを共有できないという状況に陥ることもあると思います。
子どもがいない夫婦が「子どもはまだ?」と言われることは少なくなりましたが、1人でも子どもがいることで周囲の声も遠慮がなくなりがちです。親戚に会うたびに「次は?」と聞かれる、ママ友の間では2人目3人目の話題は日常的にある、といったお話も聞きます。子育ての現場では実際に赤ちゃんを目にする機会も増え、2人目を妊娠できない痛みを日々のなかで感じる機会も多くなるのが現実です。
「どうしてうちには赤ちゃんがいないの?」という子どもからの素朴な質問に答えられず、自分を責めてしまうという人もいます。実際、2人目を望む理由としてよくうかがうのが、「ひとりっ子はかわいそう」という声です。そう思うから余計に子どもからの質問に申し訳なく思ってしまうというのです。
きょうだいがいれば一緒に遊べる、将来的には何かと助け合える、などメリットを強調して語られることがあるのは、「夫婦と子ども2人」という構成が家族のモデルケースという印象が現代でも強いからかもしれません。
このように2人目不妊の悩みは、子どもができないという直接的なつらさに加えて、人生観や価値観を見つめ直す必要に迫られるしんどさもあり、実に多様です。家庭によっても考え方は異なります。デリケートな話題だけに、相談する人を見つけられず、毎日の子育てに奮闘しながらもどかしさを抱えていることが多いという印象です。
一方、子どもから気づかされたという声も聞きます。2人目をほしがるあまり、子どもから「ぼく・わたしだけじゃママは幸せじゃないの?」と言われてはっとしたと話す方もいらっしゃいました。目の前の子どもは何かを感じ、考えて日々成長しています。「かわいそう」などと思ってはこの子に失礼だと気づいた、との声もうかがいます。まずは家族の今の生活を大切にすることを最優先にできるといいですね。
その上で2人目を望んで、治療をしよう・続けようという場合は、周囲からのプレッシャーや固定観念に押されるのではなく、夫婦が本当に2人目を望んで向き合って欲しいとお伝えするようにしています。何人目であっても子どもが欲しいときに子どもができない悩みは同じです。遠慮なく話せる場として、不妊・不育ホットラインではお話を聞かせていただいています。
(東京都不妊・不育ホットライン相談員)